こんにちは。中国語発音講師のmidoriです。
「AとB」の「と」の部分にあたる名詞と名詞を並列する接続助詞「和」の読み方、普通話では「hé」と読みます。
明天我和他一起去看电影。 Míng tiān wǒ hé tā yīqǐ qù kàn diàn yǐng.
が、台湾では非常に独特で「hàn」と読みます。
明天我和他一起去看電影。Míng tiān wǒ hàn tā yīqǐ qù kàn diàn yǐng.
私はマイクロソフトのローマ字ピンイン入力で繁体字を入力していますが、その時も「hàn」で一発変換してくれます。でも簡体字ではしてくれません。(ちなみにGoogle入力の中国語ではベースが大陸の中国語なので繁体字版で「hàn」と入力しても候補に「和」は出てきません)
もともと「和」という文字は漢字の中でも珍しく、ほかの読み方が沢山ある文字で辞書を見ると実に5種類以上の読み方があります。(中国語の漢字は基本1文字につき読み方は1種類のみ。複数ある場合も大体2種類程度)でもその中にには「hàn」は含まれていません。
一体なぜ??
実は辞書には載っていませんが、北京方言では「和」を英語で言ったら「and」の意味として使う時に「hàn」もしくは「hài」と読むそうです。
そんな北京方言が遠く離れた南の島で「標準語」扱いとなっているのか?
これは第二次大戦後、国共内戦に敗れた国民党政府が台湾に逃れてきて強制推進した「国語運動」の一環で、1946年5月から「生粋の北京育ち」である言語学者の斉鉄根氏が毎朝7時にテレビに出演、「国語読本のお手本」として講義を行った影響だそうです。台湾の学校教員はこの講義を放送しながら国語を指導したため、多くの生徒たちがこの斉氏の話す言葉を標準語として習得していった背景があるとのこと。色々調べていくと「和」以外の台湾と大陸で読み方の違うもののルーツはこの大先生の影響によるものだとわかってきました。これについては今後またこのシリーズで取り上げていきますね。
そんなわけで、台湾の人と距離を縮めたいと思うなら「和」は「hé」と読まずに「hàn」と読むことをお勧めします。切り替えが上手くいかないなと思ったら「和」を使わずに「跟」「gēn」を使うのもいいでしょう。もちろん台湾でも「hé」を全く使わないわけではないけど、やはり圧倒的に「hàn」のことが多く、「hé」というのを聞くと台湾の人は「ああ、あなたは大陸式の中国語を習ったのね」と微妙に距離を感じてしまう人が多いからです。
「そんなこと気にしないよ」と言ってくれる台湾の友人がいたならば、そういう友人はぜひ大事にしましょう。関わりの薄い人ほど(たまたま乗り合わせたタクシーの運ちゃんとか)いちいちこちらの話す中国語についてああだ、こうだと指摘してきてこっちがムカつく、というのもよく聞く話です。どのみち、今まで慣れ親しんだ音を変えるのにはそれなりの負荷がかかります。短期間の滞在であったり、たまに会う台湾の人と交流がある程度なら特に気にしなくてもいいかもしれません。
ただ、ことばってそれぞれの土地の「なまり」のようなものがあり、外から来た人がその土地のなまりを理解してくれていたらやはりちょっとうれしくなると思うんですよね。そんなこと言ったらキリがないかもしれないけれど人間同士、「共通言語(ノンバーバルなものも含む)」は多いに越したことはないと思います。